石油ファンヒーターの選び方
セキユファンヒーターを選ぶときのコツをお話します。
かつてはパナソニック、三菱電機、サンヨー、シャープなどの、いわゆる白モノ家電メーカーからも石油ファンヒーターがリリースされていましたが、現在はいずれのメーカーも市場から撤退しています。
そのため、メーカー選びとしては、実質的にはダイニチ、コロナ、トヨトミの3社の製品の中から選ぶことになります。(日本でも有名な海外メーカーのひとつに、アラジンというメーカーもありますが、純粋な国内メーカーではありません。)
好みのデザインや求める機能、ブランドへの信頼など、様々な比較検討のポイントはあるかと思いますが、最も重要な点は、どのメーカーの製品を選ぶかよりも、利用したいと思っている部屋の広さにしっかりと対応した製品を選ぶということにつきます。
最近発売された製品は、いずれのメーカーの製品も非常に優秀であり、デザインや機能、性能、耐久性など、購入者の好みの問題はあれども、「このメーカーの製品を買って失敗した」という事案は、非常に少ないと思われます。
これまでに多くの暖房製品を取り扱ってきた経験からいえば、部屋の広さギリギリの製品ではなく、1ランク上の広さに対応している石油ファンヒーターを選ぶ方が、より快適に過ごせると考えています。
これは、グレードをアップするという意味ではなく、対応している広さに余裕を持たせようという意味です。
というのは、ギリギリのスペックで稼働させるより、十分な余裕がある方が、暖房効率が良くなるからです。
たとえば、ダイニチのホームページには、対応している広さと、石油ファンヒーターのグレードが一覧化されたマトリックスがあります。
この表に従えば、部屋が8畳の場合は、FW-272Sシリーズや、FW-257NEシリーズを選べばよいということになりますが、あえて1ランク上位にあたる、FW-372Sや、FW-357NEを選んだほうが、満足度が高いと思います。
車でも同じですが、軽自動車でも普通自動車でも、確かに時速80キロは出ます。
しかし、無理をして80キロを走っている軽自動車は、どうしても燃費が悪くなります。
同じように、石油ファンヒーターも、余裕を持たせて運転をさせる方が、燃費が良いだけでなく、部屋の暖まり方も穏やかになります。もちろん、音も静かで済みます。
そのため、結果的により快適な空間が得られるのです。
石油ファンヒーターはすでに成熟製品でもあり、必要十分な機能や性能は出つくしているといっても過言ではないジャンルなので、新製品でも安価で販売されることが多く、仮に1ランク上の製品を選んだとしても、実売価格でいえば価格差は1000円~3000程度だと思われます。
いずれにしても、まずは部屋の広さにあった暖房出力をもった製品をピックアップするところから始めましょう。
灯油タンクの容量について
タンクの容量については、暖房出力に応じたサイズになっているので、メーカー毎にそれほど差はありません。強いて言えば、灯油を入れるときの利便性を考慮しているキャップかどうかという点ですが、この点に関して言えば、ダイニチ製品は非常に優秀です。
通常、灯油のタンクはねじ式のキャップになっているため、キャップを回さなければなりませんが、最近のダイニチの石油ファンヒーターは、キャップをつまむと自動的にキャップが外れる仕組みになっているため、回す必要がありません。
また、一時期大変問題となったコロナ製の「よごれま栓」という名称の灯油タンクのように、灯油タンクを取り出す際に本体に引っ掛けてキャップが開いてしまうという問題も起きないため、安全性の面からもおすすめできます。
ただ、どんなに便利な機能だといっても、灯油に一切触れずに給油ができるというわけではありません。
キャップ周辺には灯油が付着するので、雑巾やタオルなどでキャップをもつことは欠かせません。
肌が弱い方などは、灯油が付着したままでしばらく放置すると、炎症をおこすなどの思わぬトラブルを招くことになりますので、ぜひ慎重に取り扱いましょう。
余談ですが、かつてシャープから製造販売されていた石油ファンヒーターは、灯油のタンクが特徴的で便利なタイプがありました。
通常、石油ファンヒーターの灯油タンクは、灯油を入れる際に、タンクをひっくり返してフタを開け、給油をするものですが、シャープから発売されていた石油ファンヒーターは、タンクの上部にフタがついており、灯油タンクをひっくり返すことなく給油が可能でした。
たとえ5リットルとはいえ、5キログラムというのは結構な重量。
おまけに、ひっくり返す過程で灯油をこぼしてしまったりすることも稀にあるものですが、そうした心配をすることがなく給油ができた点は、当時は画期的で愛好者も多かったものですが、残念ながらシャープも市場から撤退しているため、現在ではお目にかかることができません。
こうした工夫を凝らした製品がまたリリースされることを望みますが、一般的にプロダクトデザインは多数の特許によって守られているため、他のメーカーが同様の構造を取り入れるのは難しいのかもしれません。
付加機能について
付加機能とは、暖房性能以外の機能に関するものです。
たとえば、人感センターや、タイマー、消臭機能、消臭シャッター、チャイルドロックといった機能です。
近年では、チャイルドロック機能や、タイマー機能、消臭機能などはどのメーカーも当たり前のように実装されているので、もはや基本機能のひとつとして考えても差し支えありませんが、より大きな液晶パネルをもっている機種や、コンセントを抜いても時刻などの基本情報がクリアされないよう、フラッシュメモリを搭載している機種など、製品ラインナップによっては若干の機能差があります。
いずれにしても、石油ファンヒーターはすでに高度に成熟した製品のひとつですので、メーカー間、製品間の一番大きな付加機能は、本体のデザインかもしれません。
高級機種は、何が高級なのか?
どのメーカーも、普及価格帯の製品と、高級価格帯の製品のラインナップをもっていますが、個人的な意見としては、普及価格帯の製品で十分だと思われます。
高級機種は、普及価格帯の製品とどのような点が違うかといえば、主にデザインと、付加機能に関するものです。石油ファンヒーターの性能の根幹をなすバーナーやタンクの性能については、普及価格帯であっても決して見劣りするものではありませんので、特に高級機種にしか実装されていないというものでもありません。
トヨトミから発売されている石油ファンヒーターの機種のひとつに、LC-SL53Bという機種がありますが、この機種には人感センサーが搭載されており、人の気配を感知して省エネモードに切り替えるなどの付加機能があります。
ただ、現在も意欲的に新製品をリリースしているメーカーが3つしかないことと、もはや大きな差別化を図ることが難しくなっているという製品でもあるため、仮にどれかひとつwp選ばなければならないという場合でも、それほど多くの選択肢はないはずです。
たとえば、こちらに石油ファンヒーターのおすすめ機種を紹介していますが、おすすめというより、広さにあわせた製品を選ぶと、それぞれのメーカーで選択肢が2機種ずつ程度しかなかったりします。
ダイニチのコンクリート20畳用を選ぶとすれば、普及価格帯のFW-567Lシリーズか、よりハイグレードなFW-577LXシリーズがあります。
FW-577LXは点火時のノイズがより静かになっていたり、音声ガイドがついていたりと、機能的な違いは若干あるのですが、燃費に劇的な差があるわけでもなく、普及価格帯の方が明らかに何かが劣っているという印象もありません。
成熟製品であるため、あらたな付加価値をつけにくいことが影響しているのかもしれませんが、あたたかい風を得るための道具として考えた場合では、両者の差は全くないといっても過言ではないため、特別なこだわりでもない限りは、普及価格帯の製品を購入することをおすすめします。
ちなみに上記の動画は、ダイニチのFW-567Lという機種の前モデルである、FW-566Lという機種の動作を撮影したものです。
着火速度や消臭機能などは廉価版モデルであっても必要十分な性能で、上位モデルを購入したとしても、こうした暖房性能を左右する基本機能については、まったく遜色ありません。
家電の販売事情でいえば、よく売れる製品ほど「数が出る」ので、値段も安くできるものです。
実際に価格を見てみると分かりますが、お値打ちなセールは、例外なく「よく売れている製品」で行われていますので、いい品物を安く買いたいという場合は、「普及価格帯」の製品を狙うようにしてみてください。